投球の加速期~リリースにかけて肩関節には大きな負荷がかかり、その負荷は蓄積します。すると肩の棘下筋や小円筋には疲労がたまります。関節包は肥厚しながら固くなります。そして、関節唇にも損傷をきたすようになります。そこに、炎症が生じると痛みが生じます。
関節唇の損傷形態は大きく4つに分類されます。進行すればするほど、痛みやひっかかりが生じ、可動域制限が強くなります。
肩関節が脱臼すると、関節唇が破壊され、簡単に再脱臼が起きやすくなります。脱臼が繰り返されると変形性関節症に移行します。
投球障害や反復性脱臼で、肩関節に負荷がかかり続けると、やがて変形性肩関節症に移行し、不可逆な変化になります。
痛みが生じてしまった場合、組織修復のためには少なくても3週間以上の安静が必要になってきます。中途半端な安静にした場合、再発が起こりやすく、治療は長期化し、症状は慢性化します。こうならないためには、安静にするときは「気合をいれて安静」と「日常生活からとことん安静にする」必要があります。と同時に、安静にしながらも理学療法士を介入させて、早期に機能回復と現場復帰をめざします。そのときに、再発防止の指導をうけることで慢性化を防ぐことができます。痛みがなかなか取れない場合や痛みを早くとりたい場合は、肩関節に炎症をしずめる注射をします。当院では、注射をするときは超音波エコーを用いて、ターゲット部位に正確に打ちますので、安全性が高く、速やかな効果が期待できます。MRIをすることで関節の中の状態を精密に評価できます。精密検査をして正しい診断をつけましょう。正しい診断と治療によって、痛みは早く軽快し、長期的な好成績を生むことができます。
練習量と安静量のバランスが崩れると、疲労が蓄積しパフォーマンスが低下します。ここで、しっかりと安静をとり、その間に適切な再発防止の指導をうけると、その後は「超回復」といったよい現象が生じ、競技能力が向上します。当院はここを目指しています。逆に練習量過多の状況がつづき、安静量と練習とのバランスが崩れると、長期的なパフォーマンス低下に陥り、慢性的な痛みが生じます。しだいに関節唇の損傷は進行し、手術が必要になることもあります。そうなると残念ながら活躍の道が絶たれることになります。競技能力の向上に大切なことは、適切な練習量と安静量のバランスをとって、痛みを予防することです。万一、痛みが生じた場合は、早期に発見し、早期に対処することが大切です。
関節唇損傷は徐々に進行し、肩関節機能は徐々に低下します。関節唇損傷が進行する場合や保存加療に抵抗する場合は、関節鏡を用いた低侵襲手術で根治させることができます。長く関節の不安定症や痛みで困っている方は、ご相談ください。