PRP治療の概要をまず動画で説明します。
治療の初期には、消炎鎮痛剤の内服・外用、リハビリテーションが行われます。その治療に抵抗する場合は、ステロイドやヒアルロン酸の注射が行われるのが一般的でした。しかし、これらの治療に抵抗する場合、従来の治療における次のステップは手術療法となってしまうことが多かったです。手術療法は、入院を必要とし、体にメスをいれるため、患者の肉体的負担、精神的な負担、金銭的な負担が大きく、そこにギャップを感じる患者様は非常に多いです。
そのギャップを埋めるために、新しい再生治療がうまれました。これが「PRP療法」になります。
なかなか改善しない慢性的な痛みのある患者に対し、関節の炎症を鎮め、痛みや腫れを緩和し、関節破壊の進行をくい止めると期待されています。
通常の投薬や注射よりも、長期的な疼痛改善効果があり、組織修復を助けることが特徴です。
PRPをまず動画でイメージします。
血液中には「血小板」があり、血小板には成長因子などが多く含まれています。この成長因子は、組織修復のプロセスに関与しています。
患者様ご自身の血液(約15ml)を遠心分離機にかけ、炎症を惹起する赤血球と白血球を約99%除去します。そして、その上に分離・濃縮された血小板の黄色い液体のことを多血小板血漿(PRP)といいます。赤血球と白血球がほとんど含まれないため、“Pure-PRP”とも言われます。成長因子が多数含まれたこのPRPを患部に注入することによって、筋肉・腱・靭帯・関節の組織修復を促進し、慢性炎症による疼痛の改善を図ります。
治療は上記の3つのステップで行われます。採血から治療提供まで15分程度でおこなわれます。
当院のPRPは他のPRPと比べて、少量(15ml)の採血で負担が少なく、短時間で治療が完了するのが特徴です。
PRPを注入することで、関節内で病的な炎症を引き起こす仕組み(NF-κBシグナル伝達経路)を抑制し、痛みを緩和し、軟骨破壊を抑制します。
この治療は欧州で既に治療法として承認されており、欧米では既に複数の機関で客観性の高い臨床試験が行われ、その有効性が国際的に権威のある学術雑誌に報告されています。
病的な関節では、炎症成分(IL-1,TNFαなど)により、NF-κBシグナル伝達経路が活性化し、軟骨破壊成分(MMP)が作られ、軟骨破壊が進行します。この破壊された軟骨成分がさらに炎症を惹起し、過剰な炎症にエスカレートします。この悪循環によって、細胞死も増加します。
PRPに含まれる成長因子等により、細胞の活動が正常化され、NF-κBシグナル伝達経路は抑制され、炎症成分(IL-1,TNFα)、軟骨破壊成分(MMP)の過剰産生がおさまります。これにより、炎症が改善し、痛みは緩和します。正常化した細胞は軟骨の保護に働き、好循環がうまれます。
個人差はありますが、注射後、平均的に4〜6週後程度で効果が実感されます。
約3人に2人の方が、6~7割程度、痛みが楽になり、
平均して1年間痛みの改善が持続されたことが報告されています。
患者さんの血液を材料とした治療のため、アレルギー反応や拒否反応などのリスクが少ない治療法です。比較的安全で副作用も少ないです。
採血は約15mLですので、通常の献血量である200mLに比べて少量であり、比較的安全性の高い処置だと考えられます。
PRP注入後3~4日は、患部の痛みやかゆみ、腫れが生じます。
ときに、赤み、内出血が生じることもあります。こうした症状は、個人差もありますが、次第に治まります。
治療当日は入浴は控え、シャワー浴にしてください。翌日から入浴可能です。
投与後、数日間は血流の良くなる活動(長時間の入浴、サウナ、運動、飲酒など)は控えましょう。
長期的な好成績をうむためにも、注入後も適切にリハビリテーションを続けることが大切です。
ごくまれに、感染することがありますが、その場合、適切な抗生剤と経過観察を行います。
その他に、血栓、アレルギー反応、出血が可能性としては考えられますが、ヒアルロン酸や生理食塩水の投与と比べても、有害事象のリスクは上昇しないという調査報告があります。万一偶発症(稀に起こる不都合な症状) が起きた場合には、適切な説明と最善の処置を行います。
PRPの製造途中で発生した問題(血液の凝固など)により製造が完了しなかった場合は、採血を行ったにもかかわらず、PRP注入ができない場合があることをご理解ください。
1) 抗凝固剤を使用中の方
2) 血小板減少症等出血性素因がある方
3) 貧血の方
4) 重篤な感染を有している方
5) 易感染性宿主(糖尿病・免疫不全・慢性腎不全・肝硬変の方)
6)悪性腫瘍の治療中の方